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国木田独歩の本名とペンネームの由来

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国木田独歩の本名とペンネームの由来

国木田独歩くにきだどっぽは、1871年に千葉県銚子で生まれ、1908年に肺結核で亡くなった日本の詩人、小説家です。

国木田独歩(1871〜1908)

教師を一時務めたあと、新聞記者となり、日清戦争時には従軍記者として参加。のちに作家や編集者としても活躍。

散歩を好み、日課のように郊外を歩き回ったそうです。

国木田独歩の代表作には、『武蔵野』や『牛肉と馬鈴薯』といった作品があります。

昔の武蔵野は萱原かやはらのはてなき光景をもって絶類の美を鳴らしていたようにいい伝えてあるが、今の武蔵野は林である。

林はじつに今の武蔵野の特色といってもよい。すなわち木はおもに楢の類で冬はことごとく落葉し、春は滴るばかりの新緑萌え出ずるその変化が秩父嶺以東十数里の野いっせいに行なわれて、春夏秋冬を通じ霞に雨に月に風に霧に時雨に雪に、緑蔭に紅葉に、さまざまの光景を呈するその妙はちょっと西国地方また東北の者には解しかねるのである。

元来日本人はこれまで楢の類いの落葉林の美をあまり知らなかったようである。林といえばおもに松林のみが日本の文学美術の上に認められていて、歌にも楢林の奥で時雨を聞くというようなことは見あたらない。

自分も西国に人となって少年の時学生として初めて東京に上ってから十年になるが、かかる落葉林の美を解するに至ったのは近来のことで、それも左の文章がおおいに自分を教えたのである。

出典 : 国木田独歩『武蔵野』

国木田独歩というのはペンネームで、本名は国木田哲夫(幼名は亀吉)と言います。

この「独歩」というペンネームの由来は、1897年、処女作『源叔父』を書き上げた際に、孤独のうちにひとりで歩む、という意味を込めて名付けられます。

ちょうどこの少し前、大恋愛の末に結婚した妻信子と家庭の事情で離婚することになる国木田独歩が、その絶望のなかで執筆したのが『源叔父』でした。

そして、こうした状況下で、孤独でも強く歩んでいこう、という決意が、国木田独歩というペンネームに繋がります。

ちなみに、ペンネームとしては、他に孤島生、鏡面生、鉄斧生、九天生、田舎漢、独歩吟客、独歩生などがあります。